明治・大正の初版本 文学のたたずまい

会期
2005年6月13日~2005年12月1日
会場
Pam A館 Exhibition Zone

“本との出会いは、まずそのたたずまいが人を惹きつけ、手がページに触れ、繰ることからはじまります。小説の展開のときめきは、ページを繰る所作と連動しているともいえます。そして、内容と装丁がみごとにひとつの世界を創り上げ、読後の印象となるのです。”

1868年、明治維新政府が成立し、封建的身分制度の廃止、廃藩置県、学制の発布、太陽暦の採用など、社会の枠組みが大きく変容し、文明開化の名のもとに西洋の文化や知識を取り入れる啓蒙運動が盛んに行われました。出版事業も江戸時代以上に活性化します。

特に鉛活字を用いた活版印刷の導入と機械動力の後押しによって大量かつ高速印刷が可能となり、より多くの情報がより多くの人々のもとに届くこととなりました。

文学の内容においても、翻訳や新しい思潮を紹介する動きから、文学そのものの形式の多様化や革新に進みます。擬古典主義、浪漫主義、自然主義、耽美主義、大正時代には理想主義、新現実主義と称される動きが次々と興りました。何よりも、新しい情報を求める読者の欲求が文学界・出版界を揺り動かし、多くの実り、つまり数々の名作の誕生につながったのです。

今回ご紹介する、明治・大正の諸作家による本は、多くの人々に愛されいずれも名作として時代を超え、版を重ねたものばかりです。とくに作品初出時の初版本は、著者の装丁に関する想いや姿勢が反映されることが多く文学と美術の融合した総合的な作品として、刮目に値します。

初版本およそ80点、書簡などの参考資料4点を展示しております。よく知られた作家の名はもとより、装丁者として多くの日本画家、洋画家の名を見ることができます。お手に取ることができず残念ですが、その雄弁なたたずまいをご鑑賞ください。

明治・大正の初版本 文学のたたずまい
会場写真